債権法改正のポイント3 法定利率
1【法定利率】
(1)〔適用される場面〕
金利(利息)を支払わなければならないことは決まっているけれども、その利率が決まっていない場合には「法定利率」が適用されます(旧法第404条、新法第404条第1項)。
お金の貸し借りなら「金利を支払うことは決めたが、その利率は決めていない」というケースはあまりないかも知れませんが、不法行為(例えば交通事故)の場合、加害者は、被害者に対して損害額とともに不法行為の日からの遅延損害金も支払わなければなりません。その遅延損害金に関しても法定利率が適用されます。
(2)〔中間利息の控除〕
例えば交通事故で被害者が死亡した場合や後遺症が残った場合、加害者は、被害者が67歳までに得ていたであろう所得(逸出利益)を賠償しなければなりませんが(実務では67歳までを就労可能年齢として処理していますが、この点は、長寿化・高齢化で近々見直しは必至だと思われます)、被害者は将来得るべき所得を現時点で賠償金として受領しますので、その間の利息を差し引く必要があります(例えば、25歳の被害者が亡くなった場合、67歳の時に得る所得については42年分の金利を差し引いて計算する必要があります)。これを「中間利息の控除」と言いますが、その際も法定利率で計算されます。
新法は中間利息の控除に関しても「その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率」を適用すると明記しました(新法第417条の2)。
2【5%→3%】
■ ポイント 3パーセントに引き下げられます。 |
(1)〔引き下げ〕
旧法では、法定利率は「年5分」と定められていました(旧法第404条)。民法制定当時(明治29年)の一般的な貸出金利を斟酌して定められた利率ですが、「ゼロ金利」とか「マイナス金利」と言われる時代にはそぐわないので、新法では「年3パーセント」に引き下げられました(新法第404条第2項)。
旧法の「年5分」の表記が、新法では「年3パーセント」と改められた点にも「時代」を感じます。
なお、中間利息の控除に関しても法定利率で計算されること1(2)でご説明した通りです。しかし、今、年5パーセントの金利が付く定期預金はありません。したがって、年5パーセントは「引かれ過ぎ」でした。3パーセントでもまだ「引かれ過ぎ」と感じます。
この点で、年3パーセントでも市中金利と乖離しているかも知れませんが、実務は約120年間に亘って年5パーセントで運用されていましたので、そのこととのバランスも考慮された結果です。
(2)〔変動金利〕
冒頭、今般の債権法改正が約120年ぶりと申し上げましたが、民法という基本法を頻繁に改正することは困難です。しかし、今後も市中金利は変動し、その結果、年3パーセントの法定利率と市中金利とが再び乖離する事態もあります。
そこで、今後は、3年毎に法務省令で定めることになり、その基準は法律で定めています(新法第404条第3項以下)。
3【商事法定利率の廃止】
商行為によって生じた債権に関して法定利率は「年6分」と定められていましたが(商法第514条)、債権法改正に伴い商法第514条は削除されました。
したがって、商事債権に関しても、法定利率は年3パーセントになります。
4【施行時期】
新法の施行日は2020(令和2)年4月1日ですので、2020年3月31日までに生じた債権に関して旧法ないし商法第514条が適用され、年5パーセントないし年6パーセントになります(附則第15条第1項)。