遺言

1〔遺言が優先〕

2月9日に配信したメールマガジン第3号では民法が定める相続のルール(法定相続人、法定相続分)についてご紹介しましたが、亡くなった人が遺言を残していたら遺言が優先し、遺言に従って遺産が引き継がれます(民法第902条、908条第1項、第964条)。
但し、遺言も無制限ではありません。配偶者や子の「遺留分」を侵すことはできません(遺留分については、後日、あらためて説明します)。

2〔どんな場合に遺言が必要か?〕

遺言が必要な代表的なケースは、次の通りです。

①〈誰か1人に全て相続させたい場合〉

例えば夫婦に子どもがないと、夫が死亡したとき、妻と、夫の兄弟姉妹が相続人になりますが(夫の父母、祖父母が既に亡くなっている場合)、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、遺言を残せば妻に全てを引き継ぐことができます。

②〈事業を引き継いでくれる子に事業用の資産を引き継がせたい場合〉

例えばオーナー社長が、自らの事業を引き継いでくれる長男に事業に必要な財産(店舗や工場、自社株など)を相続させたい場合、遺言がなければ、事業を引き継ぐ長男も、東京でサラリーマンをしている次男も、全ての財産を同じ割合で相続することになりますが、遺言を残しておけば、例えば長男に事業に必要な財産を、次男に預貯金を相続させて、事業を次世代へ引き継ぐことができます。

③〈法定相続人以外にも財産を残したい場合〉

長年連れ添った事実上の配偶者であっても、婚姻届を提出していなかったなら(いわゆる内縁の妻)は法定相続人ではありません。あるいは身体が不自由になった後、身の回りの世話をしてくれた「息子の嫁」も法定相続人ではありません。内縁の妻や、身の回りの世話をしてくれた人に財産を残すには遺言が必要です。

④〈相続人がもめないように〉

遺産の分け方で相続人たちがもめないように、誰が、何を引き継ぐか、遺言で決めておくこともできます。

⑤〈法定相続人の誰かが行方不明〉

今年に入って2件、「相続人のうち1人が行方不明で、遺産分割協議ができない。」とご相談がありましたが、遺言がなければ、法定相続人全員のハンコがないと、被相続人の預金を引き出すことさえできません。

【遺言の作り方】

3〔口頭ではダメ〕

それでは、遺言はどのように作るのでしょうか? テレビや映画のように、臨終に際して口頭で言い残したとしても法律上、遺言とは扱われません。遺言は民法が定める方式に従って「書面」を作る必要があります(民法第960条)。

よく利用される遺言の方式は、自筆証書遺言と、公正証書遺言です。

4〔自筆証書遺言〕

自筆証書遺言は、遺言を作りたい人が、その全文と、日付、氏名を自署し、捺印します(民法第968条第1項)。つまり、ワープロで作った自筆証書遺言は法律上、無効です。但し、2018年の相続法改正によって財産目録はワープロやコピーでも構わないことになりました(民法第968条第2項)。

5〔公正証書遺言〕

公正証書遺言というのは、遺言を作りたい人が公証役場へ行って、公証人に遺言の内容を伝え、公証人が口述を書き記して作る遺言です(民法第969条第1項)。
ザックリ言うと、自筆証書遺言はタダだけど「危険」。
公正証書遺言は少し手数料がかかるけど、安全、確実です。

6〔お勧めは公正証書遺言〕

日付を「昭和41年7月吉日」と書かれた自筆証書遺言について、最高裁は「日付の記載を欠く」ことを理由に無効としたように(最高裁判決昭和54年5月31日)、一般人が自筆証書遺言を作ることは容易ではありませんし、遺言が「登場」するのは作成者が亡くなった後ですので、もう作り直すこともできません。

それにコッソリ自筆証書遺言を作ったとしても、亡くなった後、発見されないこともあれば、その自筆証書遺言で損をする人が隠してしまうこともあります。

ですから、私は「遺言を作りたいのですが。」とご相談を受けた場合、例外なく、公正証書遺言をお勧めしています。証人には、私と前川清成法律事務所の事務員がなりますので、利害関係者に知られずに、コッソリ作ることも可能です。

前川清成法律事務所では、公正証書遺言の作成について、手数料15万円で承っています(別途消費税及び公証人手数料等実費)。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA