2011(平成23)年8月22日

法曹養成制度検討プロジェクトチーム中間とりまとめ(メモ)

事務局長 前 川 清 成

1 法科大学院制度に関して、抜本的な見直しが必要であること。
(1) 小泉内閣が推し進めた「司法制度改革」は、日本版ロースクールである法科大学院を創設した上で、その修了者の7、8割が「新司法試験」に合格することを想定していたにもかかわらず(平成13年6月12日、司法制度改革審議会意見書P.67)、総じて法科大学院における教育内容は不十分と言わざるを得ず、この結果、司法試験合格率は25.4パーセントと低迷している(平成22年度)。また法科大学院74校のうち17校、すなわち約4分の1の法科大学院においては、その修了者の司法試験合格率が1割に満たない。
これに伴い、法科大学院志願者数も平成16年度は7万2800人、志願
倍率13.0倍に達したものの、平成23年度は2万2927人、志願倍率5.1倍と、志願者数において約4分の1、志願倍率において約3分の1程度にまで落ち込んでいる(平成23年8月11日、法務省配布資料5)。
法曹を志す者がかくも減少してしまったなら、「高度の専門的な法的知識
を有することはもとより、幅広い教養と豊かな人間性を基礎に十分な職業倫理を身に付け、社会の様々な分野において厚い層をなして活躍する法曹を獲得する」(上記司法制度改革審議会意見書P.11)ことは到底不可能になってしまう。
(2) 司法試験合格後、司法修習を経て、「考試」、いわゆる「二回試験」に合格してようやく法曹資格を取得し得るところ、その不合格者は、従前は毎年1、2名程度に過ぎなかった。
ところが、法科大学院修了者の第1期生である新60期においては1055名中76名が不合格となり、その後も新61期は113名、新62期は75名、新63期は90名と、法科大学院創設以前に比して激増している。
(3)  これら客観的状況に照らせば、「司法制度改革」の意図した「法科大学院を中核とした法曹養成制度」が蹉跌を来したことは明らかであり、当プロジェクトチームにおいては、引き続き、かつ早急に「法科大学院を中核とした法曹養成制度」の検証と、抜本的な見直しを行う。

2 経済的弱者に対しても司法試験受験の機会を保障すること。
(1) 1において述べた通り法科大学院が十分な教育内容を確保できていないにもかかわらず、司法試験を受験するには、原則として法科大学院を修了しなければならないこととなったが、法科大学院で原則である3年間学ぶには、学費だけでも、平均して、国立においては271万1088円、私立においては427万8817円を要する(平成23年8月18日、文部科学省配布資料6)。したがって、経済的に困難な立場にある者に限らず、法曹を志す者にとっては、この学費こそが最大の経済的障壁となっている。
(2)  このように法科大学院を修了するには多額の学費を要するため、司法修習修了者のうち48.3パーセントの者が奨学金の貸与を受けており、平均貸与額合計は347万円にも達する(平成23年8月18日、法務省配布資料3)。しかも、奨学金は「借金」にほかならないから、万一司法試験に合格できなかった場合(現実には1(1)で述べた通り受験者の約75パーセントが不合格となる)、不合格者の「再スタート」を阻害してしまう。
(3)  したがって、引き続き法科大学院修了を司法試験受験資格とするのであれば、法曹を志す者に対して「機会の平等」を保障し、司法試験の「公平性」、「開放性」を確保するために、法科大学院の学費を大幅に引き下げるべく、国は法科大学院生あるいは法科大学院に対して、思い切った多額の財政支援を実施すべきである。
しかるに、我が国の財政が極めて厳しい状況にあることは、今さら指摘するまでもない。よって、仮に財政的な制約によって(3)記載の財政的支援を実施できないのであれば、法科大学院修了を司法試験受験資格とすることを見直すべきである。1において指摘した通り法科大学院が期待された教育効果を上げていないにもかかわらず、法曹を志す者に対して法科大学院での勉強を強制する合理的な理由はない。
そもそも法曹には多種多様な人材が求められるのであるから、司法試験の「勉強方法」も法科大学院に統一、画一化する理由は見当たらない。法科大学院で学ぶ者もあれば、経済的な事情等で独学する者など、司法試験合格水準へ達するための勉強方法も多種多様であってよい。

3 「貸与制」か、「給費制」かが本質ではないこと。
司法修習生に対して、修習期間中に給与を支払うか、あるいは、生活費を貸与するか、いわゆる「給費制」か「貸与制」か、いずれが適当であるかは、現在の法曹養成制度における本質的課題ではない。「給費制」維持論者は「給費制が廃止されたなら、カネ持ちの子どもでないと弁護士になれない」と主張するものの、2(1)で述べた通り司法試験を受験するには法科大学院を修了しなければならないこと、法科大学院を修了するには多額の学費を要することが、法曹を志す者にとっては、最大の経済的負担である。「カネ持ちの子ども」でない者にとっては、晴れて司法試験に合格した後に、生活費を「もらえるか」、「貸してもらえるか」よりも、司法試験受験の資格を得るために要する法科大学院の学費こそが障壁であり、「カネ持ちの子どもでなければ弁護士になれない」社会を否定するためには、法科大学院の学費の負担を解決しなければならない。「貸与制」か否かは、法曹への切符をほぼ手中に収めた者にとって、その経済的な負担がさらに増加するか否かの、いわば副次的な問題である。したがって、今般、私たちは「貸与制」に関して、とりあえずの結論を得るに至ったものの、引き続き本質的な課題、すなわち法科大学院制度や、経済的弱者に対しても司法試験受験の機会を保障する方策、加えて「予備試験」の内容や、「回数制限」の緩和、司法修習制度の期間、司法試験合格者数、さらには我が国において法曹が果たすべき役割など、法曹養成制度全般の抜本的な検証と、検討を行い、早期に見直しに着手すべきである。